ものつくり敗戦

これから、本を山積みにしようとしている書斎の中の広い机を前にして、椅子にもたれながら綴る読書本の紹介です。


今回紹介する本は、木村英紀著、『ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる 』です。


この本は、日本の明治以降の技術史を振り返りながら、日本の技術的弱点を明確にし、その対応が遅れるならば、ものつくりや技術立国としての日本は、世界の水準から取り残されてしまう可能性を指摘しています。


ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる (日経プレミアシリーズ)

ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる (日経プレミアシリーズ)


最近の日本を見ていると「ものつくり日本の復活」とか、技術で再び世界へ羽ばたくなどと言いながら、久しく低迷しているような感覚を個人的には感じていました。


本書を読んで、その原因がどこにあるのか・・・ということがわかったような気がします。


著者は、日本の弱点は「理論」「システム」「ソフトウェア」だとしています。


世の中は、今、機会からシステムへ、ハードからソフトへ、見えるものから見えないものへ・・・と技術の転換が起きていることは、なんとなく多くの人も認識しているのではないでしょうか。


ですから、「理論」「システム」「ソフトウェア」を強化していかないと、技術トレンドからどんどん離れていってしまうのです。


このような分野を軽視いているのは、なぜかということを日本の技術史を振り返りながら、著者は戦前までの日本の技術指向と戦後も変わりないと述べています。


欧米との違いを解説している部分も面白かったです。


また、この本を読むと「数学」教育の重要性も認識できると思います。


日本のものつくりの限界を指摘し、普遍性を追求しないで、暗黙知を重視する「匠を尊ぶ意識」の危険性を指摘する警告の書です。


技術系の人たちには是非一読していただきたいです。


また、教育関係の方にも読んで頂き、これからの日本の教育の在り方について考える視点の一つにしていただければとも思いました。