診断士2次受験指南(第5回)

今回は、本試験の問題を例に、実際の試験では、どのような形で解いていくかの一例を紹介したいと思います。私が受験のときどのようなステップで考えたかを平成17年度の事例Ⅲを例に取り紹介します。


事例Ⅲの試験開始の合図。受験番号を答案用紙に記入後、問題用紙を捲り、設問文を読み始める。私の場合、設問文で重要と思われる部分は、マーカーにてアンダーラインを引くことにしています。平成17年度の事例Ⅲでは、アンダーラインを引いた箇所は、次の通りです。

第1問(配点40点)
設問文の前文箇所で、「もう一つの事業の柱として家庭用エクステリア事業の強化を計画している。
(設問1)で、「家庭用エクステリア事業を強化するにあたって、C社の強みとなる点
(設問2)で、「標準生産を条件とした場合の家庭用エクステリア製品の生産体制は、どのようにすることが望ましいか。その理由を
このとき、答案の書式として「〜が望ましい。理由は、」と余白にメモ書きしています。
(設問3)で、「海外からの部品調達についての留意点を
余白へは、「QCDE」のメモ書き。
第2問(配点20点)
C社では工場改革に対する考え方が、工場と営業では違っている。その違いを踏まえた工場のあり方を
第3問(配点20点)
C社へのクレーム」、「何が問題なのか」、「その改善策
余白へは、「C社へのクレームの問題は、〜である。改善策は、〜」のメモ書き。
第4問(配点20点)
公共事業等の営業活動の場において、インターネットを活用して迅速に対応」、「どのような項目をどのように管理

以上が設問文のチェックです。ここまでで、試験開始から約5分経過しています。


次に事例与件文を、読みます。私の場合、強み、機会はブルー、弱み、脅威はピンク、その他SWOT分けの判断が微妙なものや重要と思われる箇所は、イエローのマーカーを使用していました。
ここでは、文頭から読み始めて、実際にどのような形で、チェックしていったかを順を追って記載していきます。

【ページ1】
6行目「ここ数年、公共事業の減少に直面し、売上減を余儀なくされている。
8行目「価格競争が激しく売上は伸び悩んでいる。
9行目「前々期に比べ3%減少した
10行目「本社(24名)
11行目「第1工場(26名)
12行目「第2工場(25名)
15行目「個別生産が大半である。
20行目「表面技術には定評がある。こうした技術的特徴が、C社のセールスポイントでもある。
24行目「家庭用エクステリア事業の強化である。
28行目「納期、品質など
【ページ2】
1行目「デザイン、構造計算のできる体制を活かした各種公園施設における自社製品の開発である。
20行目「営業に電子メールで送られてくるようになり、営業からの納期確認は減少している。
22行目「激しさを増している短納期要請
24行目「納期設定を、たとえば特急品の受注が入っても対応できるように意図的に余裕を持たせるという努力をしていたからである。
26行目「営業としては工場の機動性に富んだ生産体制の整備を望んでいる。
【ページ3】
5行目「他社による据え付け工事ではそうした対応ができず工場に戻されるケースがある。
8行目「このようなクレームについてはまだ抜本的な対策を講じてはいない。
10行目「この取得は、営業上の理由もあるが、取得活動、維持活動を通しての従業員の活性化を一つの目的としている。」
15行目「一つには新工場長がC社の業種業態に不慣れであること、二つにはこれまでの工場運営がいわゆる職人気質の現場作業者にまかせ生産面を重視する傾向が強かったこと

以上が事例文のチェックです。時間は開始より20分経過しています。


今、読んだ事例文の内容を頭の中に浮かべつつ、また設問を見て、各設問がどのような構造、レベルにあるか、ざっと見渡します。
第1問:前文の「もう一つの事業の柱として家庭用エクステリア事業の強化を計画している。」より、経営戦略の方向性は提示されていることがわかります。
(設問1)「C社の強み」とありますので、環境分析の問題です。答えは、事例文の中に記載されているはずです。
(設問2)「標準品生産を条件とした場合」とありますので、今までの個別生産との対比やC社に求められていることよりC社にとって望ましい解答を導き出す方向が考えられます。工程の手順は、事例文の中には記載されていましたので、各設備の配置を上げ、理由をコスト・生産効率の観点で考えました。機能戦略(生産・技術)レベルの問題です。
(設問3)コストに関しては、中国生産で競争力を高めようとしているので、ここではコスト以外の観点での解答を考えました。生産の管理項目であるQCDから、Q(品質)、D(納期)を押さえることを解答の方針としました。更にE(環境)も付加え、解答の差別化を図ることを考えました。これも海外からの部品調達に関する留意点ということで、機能戦略(生産・技術)レベルの問題です。

第2問:工場改革のあり方で、機能戦略の中での方針を求められています。営業と工場の違いを踏まえということで、改革を進めながら、違いの溝が埋められるようなことをやっていくことと、なぜ改革が必要なのかの理由が求められています。理由は、事例文の中にあるはずです。

第3問:C社のクレームへの問題点と改善策が求められています。問題点は、事例文の中にあるはずです。改善策は、問題点が解消できるような提案をすれば良いと考えました。この問題も機能戦略(外注指導)レベルの問題です。

第4問:インターネットの活用ということで、機能戦略(情報)レベルの問題です。設問文に「特急品、納期変更、仕様変更など」と書かれているので、具体例はこの3つについて書くことにしました。

これらをまとめて、解答の方向性を問題用紙の最終ページの余白に書き出したのが次の通りです。
第1問(設問1)
・デザイン及び生産能力
・表面処理の技術・開発力
(設問2)生産体制は、設備を製品別配置にしてライン化へ整備することが望ましい。
理由1:価格競争激しく→生産効率向上によりコストダウン
理由2:標準品のため→段取替え、資材準備が容易
(設問3)
納期:国内生産に連動、欠品の懸念ない業者選定
品質:国内品質基準クリア、技術力、管理能力、更に環境面
第2問
ISO9001取得のプロジェクトを基軸とした工場改革を進める
理由:この活動が全部門に関与するため
具体的:1)工場長の参画→業種業態の慣れの育成、2)品質・納期面での意識改革→職人気質からの脱却
第3問
問題:他社の据え付け工事で発生したクレームへの対応ができていないこと
改善策:1)クレーム内容の調査→解析→対処方法の検討、2)クレーム対応マニュアルの作成、他社への配布・徹底を図る
第4問
営業部門と他部門の情報管理ツールとして活用
特急品:製造部門の工程進捗
納期変更:資材調達、生産計画

以上のようなステップを踏んで、解答を作成しました。

第5回まで続けてきましたが、今回がこのシリーズの最終回です。参考にして頂き、少しでも受験生のお役に立ってくれれば幸いです。