コストダウンの進め−その9−

前回に引き続き、コストダウンの意義について述べます。


前回は、利益の確保という点から、外部に依存することなく自社内で実施できる利益確保の活動として、コストダウンは非常に有効な手段であることを述べました。


もう少し、別な角度から、コストダウンを追ってみましょう。


今、ここに総原価が100万円で、利益が10万円、すなわち売上高が110万円の製品があるとします。
この製品の利益を2倍にしたいときに、あなたならどのようなアプローチをなさいますか?


単純に考えれば、現在の原価構成ならば、売上高を2倍すれば利益も2倍になりますよね。でも。売上高2倍にするためには、どんな施策が必要なんでしょうね。考えてみると、お客様が倍に増えてくれればいいのですが、かなりの労力が必要そうです。


次にコストダウンを考えてみましょう。
売上高を変えずに、利益を倍にするには、総原価が90万円、利益が20万円になります。したがって、この場合10万円のコストダウンをすれば、利益は2倍になるんですね。

比率で言えば、10%です。すなわち、
「10%のコストダウンは、概ね売上高を2倍にするのに匹敵する」ということです。



また、別な角度からコストダウンの意義を考えてみましょう。今度は売価、そう製品の値段の観点から考えてみましょう。


御社では、製品の売価を決定するときに、次に示す2つの式のどちらで決定していますか?

原価+利益=売価 ・・・(1)
売価−利益=原価 ・・・(2)


式(1)、式(2)は項目を並べ替えただけで同じじゃないかと思われるでしょうが、式(1)、式(2)では、売価を決めるプロセスが異なります。


式(1)の場合は、生産に要した原価に必要な利益を上乗せして、売価を設定しています。この場合、売れれば生産者側が必要としている利益は確保されますが、売価が消費者側の価値イメージを満足するものとは限りません。


一方、式(2)では、消費者側が満足する売価をまず設定し、そこから必要な利益を差し引いて、出てきた原価に収まるように生産していこうということです。この場合、売価は消費者側が満足するように設定されていますし、利益も生産者側が必要とする額に設定されていますから、ここから出てきた原価で製品を生産するようにすれば良いのです。


当然、計画段階で原価試算してみると、目標とする原価に到達していない場合が多いと思います。
そこで、計画当初の試算原価と目標原価の乖離をなくすためにコストダウンが必要となってくるのです


前回と今回、コストダウンの意義について述べましたが、理解していただけたでしょうか?
中小製造業にとっては、お客様(大手メーカー)を満足させ、自らの利益も確保するために、いかにコストダウンが必要であるかを理解して頂ければ幸いです。


次回からは、「ではどうやってコストダウンを進めていけば良いの?」という疑問にお答えするため、コストダウンの着眼点について述べる予定です。