生産系コンサルタントの道 Wライセンス取得の奨め(10)

前々回、前回と渡り、中小企業診断士第2次試験の概要を述べてきました。今回は、実際に事例問題を目の前にして、どのように解いていくべきかの解法の原則について述べたいと思います。


前々回で述べたポイントとして、「中小企業診断士第2次試験では経営診断・助言ができる能力が求められている」とうことを述べました。すなわち、「答案により、事例問題に書かれている企業を取巻く様々な環境を考慮して、企業が持つ問題点や課題を解決していく」ということになります。ということは、答案は、診断結果であるということです。



「解法の原則1:答案は診断・助言内容である」


実際の企業診断では、経営者に与える助言は、単に改善を提案するだけではありません。なぜ、そのような提案に至ったのか、理由も含めて説明が必要になります。


それは、外部環境である市場の動向や内部環境である経営資源の分析(SWOT分析)の前提に立って、どのような経営的なアプローチが考えられるか(経営戦略)を説明し、各事業の方向性(事業戦略)やそのために営業や製造はどうしたら良いか(機能戦略)、さらに具体的にはどのような方法でやっていくのか(具体的改善提案)を説明していきます。


ですから、これらの事項を答案として、示さなければならないのです。すなわち、答案は診断・助言内容です。


では、上で述べた診断・助言するための根拠(理由)は、どこにあるのでしょうか。もう、お分かりですよね。それは、事例与件文の中にあります。あるいは、若干長い設問文だと、そこからも根拠(理由)が見いだせるかもしれません。


したがって、答案には、与件より根拠(理由)を求め、それを書けば良いのです。


また、設問文は、与件文に書き示されていることを、抽出したり、分析するための指示が与えられているのだと解釈した方が良いでしょう。




「解法の原則2:根拠(理由)は与件文、設問文より引出す」


ここは、大事なことでもあるので、よく理解していただきたいと思います。毎年、多くの方が受験され、自分ではできたと思っても、苦杯をなめられる方がいらっしゃいます。もし、そういう経験をされているならば、自分は設問文で問われていることに対して、根拠(理由)を与件文より、きちんと引出して答案として作成したのか、振り返ってみてください。ふと思いついたことや一般的に言われていることを書いているのではないですか。


構造的に考えた場合、事例与件文と設問文を経営戦略策定のためのフローチャートの沿って考えると見えやすくなると思います。


問題用紙に書かれている事例与件分と設問文を次に示す経営戦略策定のフローチャートに当てはめてみれば良いのです。



1)経営理念

   ↓

2)環境分析(外部環境・内部環境)

   ↓

3)今後の経営の方向性

   ↓

4)経営戦略(成長戦略、競争戦略)

   ↓

5)機能別戦略(人事・組織、マーケティング、生産・技術、財務・会計)



与件文と設問文で、このフローチャートの項目を埋めることができると思います。皆さんも、過去問をご覧になって、フローチャートへの埋め込みをやってみてください。


これは、訓練です。本番までに習熟しておいた方が良いと思います。実際の試験の中では時間的な制約がありますので、試験時間の中でもできる慣れが必要になってくると思います。できれば、いくつもの事例をやっていただき、皆さんのスキルとして頂きたいと思います。まだ、本試験までには、時間がありますから、模擬試験や問題集などで、徹底して自分のものになるように訓練してください。


受験校の先生方が、「経営戦略のフローチャートで考えてください」とよく言われていましたが、私もこのような流れが理解できるまでは、なんとなくやっているという感じで、本質を理解していなかった気がします。だから、解答に一貫性がなかったんですね。


このように解釈できると、経営戦略の部分で方向性が違っていても、流れで一貫性があれば、答案としては合格点がもらえるのです。SWOT分析において、機会、脅威、強み、弱みをどのように設定するかで、その後の流れができてくるからです。


したがって、中小企業診断士第2次試験には、正解はないと思っていた方がよいと思います。自分は、「与件文、設問文をこのように解釈したから、このような戦略を描きました」というように、論旨に一貫性があれば良いと思います。ここで、一貫性とは、論理に矛盾がないことです。


ポイント 「解法の原則1:答案は診断・助言内容である」

ポイント 「解法の原則2:根拠は与件文、設問文より引出す」



ここで述べたポイントは、中小企業診断士第2次試験だけのポイントではなかったです。


技術士(経営工学部門)の第2次試験においても、十分に利用できます。


だって、技術士だって、技術系のコンサルタントの試験なので、クライアントの要求に対して応えるという点では変わりありません。


その前に、前提としては最低限の専門知識は必要であることは当然です。



次回は、ここ3回の中小企業診断士第2次試験の取り組み方を踏まえて、今回説明した経営戦略策定のフローに従って、どのように事例文、設問文と向き合い、解答を導いていくかについて説明したいと考えています。