「持たない」ビジネス 儲けのカラクリ

これから、本を山積みにしようとしている書斎の中の広い机を前にして、椅子にもたれながら綴る読書本の紹介です。


今回紹介する本は、金子哲雄著、『「持たない」ビジネス 儲けのカラクリ』です。


先日、逝去された金子哲雄さんの遺作です。


目まぐるしく変わりゆく現代、個人も企業も固定資産を有していると外部状況の変化に対応できなくなる危険性を投げかけている本です。



個人としては、持家か賃貸かの比較を通して、「持たない」ことのメリットを説いています。


企業については小売業と製造業の2つの業種を取り上げ、それぞれ事例を挙げて説明しています。


小売業では、ダイエーとイトーヨーカ堂を対比させ、店舗が自社保有ダイエーバブル崩壊とともに、資産を持つゆえ機動力を失い、経営的に下降していく例を取り上げています。


また、製造業ではEMSへOEM生産するような流れに、自社生産にこだわり、日本の家電メーカーが乗り遅れた例を取り上げています。


ローコストで運営していくために日本のコンビニエンスストアやまたは工場でもかなりの外国人労働者が増えている実態も書かれています。


テレビのイメージとは違い、しっかりとした文章だなと思いました。


ただ、時代はある周期で大きなうねりを生じるものです。


この本を読んで感じたのは、いつまでも「持たない」ビジネスが全盛とはならないかもしれないなあということです。


輸送船や海洋漁業の船員の話なども面白かったです。


多分、死を覚悟されて書かれたんだろうなあと考えると、しっかりと最後までまとめ上げたその気力に感服しました。