絆ストレス

これから、本を山積みにしようとしている書斎の中の広い机を前にして、椅子にもたれながら綴る読書本の紹介です。


今回紹介する本は、香山リカ著、『絆ストレス 「つながりたい」という病』です。


本当に久々の香山リカさんの本です。


本書は、東日本大震災以降に被害者の方達の相互援助や共同生活などで、クローズアップされた「絆」と言う言葉をキーワードとして、人と人とのつながりについて提言しています。


震災後、誰か頼る人がいないと何かあったときに大変だと言うことで、婚活サイトや結婚紹介所の入会者が増えたり、結婚する人達も増加傾向にあったのは、ニュースで流れていましので、知っている方も多いことでしょう。



その一方で、避難所で共同生活している被災者の方には、救援物資や配給の食べ物など、自分の好みに関わらずもらい受けなくてはならないことに窮屈さを感じて一人の生活に戻られたケースもあったそうです。


この本で紹介されているように、20代の女性にユルユルショーツラクチンブラジャーを配るというのもどうなのかと思います。


大事だと思われる「絆」。


しかし、「絆」を結ぶためには拘束や制約を受けることもある。


その「絆」にすがるために、精神的にダメージを受ける人々もいるのだ言うことを著者は述べています。


最後の提言としては、「都合のよい絆」ということで、時と場合により絆が強くなったり、弱くなったりその加減がつけられるというもの。


いかにも「しがみつかない」「ほどほどの」「気にしない」、中庸論者の香山リカさんらしい提言だなと思いました。


この本は、人間関係の煩わしさに悩んでいる方、また孤独に悩んでいる方が読まれだけでなく、今の世の中では、こんなに人とのつながり方に悩んでいる人が多くいるのだということを知りたいという方も一読されると良いと思います。