現場力復権

ご紹介する本は、「現場力復権―現場力を「計画」で終わらせないために」です。著者は、早稲田大学ビジネススクール教授で、株式会社ローランド・ベルガー会長の遠藤功さんです。


現場力復権―現場力を「計画」で終わらせないために

現場力復権―現場力を「計画」で終わらせないために


この本にも書かれていますが、日本企業の現場は、派遣社員や請負などの非正社員化の進展、業務のアウトソーシング団塊世代の定年に伴う技能・技術の断絶やグローバル化による現地生産などオペレーションの海外の移転等、企業存続のためには必要な対応だったのでしょうが、現場の「質」に大きな影響を与えたのは、確かだと思います。
私も企業人であったときには、同様な感覚を持ち、ジレンマを感じていました。良い方針や計画をいくら立てても、それを実行するオペレーションが強くなくては、計画は単なる絵に描いた餅になってしまいます。本当に、現在のような感じで良いのでしょうか。不安を感じてしまいます。著者が述べているように現場起点の経営を取り戻す必要があると思います。素直に共感できました。

この本では、現場力を3つの「G」で始まる視点から考え、進化させていかねばならいとのことです。
1)Group Management(グループ競争力としての現場力)
2)Generation Shift(世代交代と現場力)
3)Globalization(現場力のグローバル化

コラムとして、対談がいくつか掲載されていますが、その中で株式会社ドリーム・アーツの山本孝昭社長との対談の中で、「確かにそうだ」と思えた話がありました。これは、山本社長がお話されているところですが、文章を引用させて頂きます。
「いま、情報とコミュニケーションが洪水・氾濫状態になっています。(中略)また、急激に増大したメールと添付ファイルは、社内に管理不能な重複データを莫大に発生させ、情報漏えいの重大リスクが急拡大しています。そして何よりも、端末に束縛される無駄な時間が増え、それによって良質・有益なアナログ時間、たとえば「考える時間」や「親密な関係性を育む時間」が大幅に減っています。その結果、人間の本質的な効率と創造性が劣化し、同僚や組織への共感力が薄れて、文脈共有も低下しています。それらがまた、情報とコミュニケーションの洪水・氾濫を加速させています。(以下略)」
今、会社の中では端末に縛られ、ボーっとしているような考える時間や雑談などの人間的な血の通ったコミュニケーションが薄れているのはないでしょうか。

私にとっては、内容ある中身が濃い本でした。「これから、強い会社にしていくんだ」という気概を持たれている方、どうやっていけば良いのか、この本を読まれて、考えてみてはいかがでしょうか。