生産系コンサルタントの道 Wライセンス取得の奨め(11)

今まで、中小企業診断士第2次試験についての取組み方について、説明してきた3回の内容をここでもう一度振り返ってみましょう。


(8)では、中小企業診断士2次試験の位置づけについて確認していきました。


「ポイント 2次試験では経営診断・助言ができる能力が求められている」



(9)では、中小企業診断士2次試験では筆記試験、口述試験で求められているそれぞれの能力と出題における経営課題について整理しました。


「ポイント 筆記試験においては『読む』、『書く』、口述試験では、『聴く』、『話す』能力が試されている」

「ポイント 事例に示される経営課題は、主に『経営革新・改善』、『新規事業開発(既存事業の再生を含む)』など」



(10)では、事例与件文及び設問文を読んで、どのようにアプローチしていくかの概要について説明しました。


「ポイント 解法の原則1:答案は診断・助言内容である」

「ポイント 解法の原則2:根拠は与件文、設問文より引出す」



今回は、前回説明した経営戦略策定のフローに従って、どのように事例文、設問文と向き合い、解答を導いていくかについて説明致します。


1)事例与件企業の現状分析


与件文に書かれている内容より、事例企業を取巻く外部環境(機会、脅威)と内部環境(強み、弱み)を区分けします。前回、述べたように、これらの現状に関しては、与件文の中に記載されていますから、該当箇所をマークしたり、記号をつけたりしながら、与件文を読まれると良いでしょう。


中小企業診断士第2次試験が現在のような形式になり、私が受験した平成17年までの傾向で言うならば、SWOTの各区分がしやすいのが、事例Ⅱ、Ⅲで、事例Ⅰ は、機会か脅威か、強みか弱みか、与件文を読んだだけでは、すぐ判断できないような、玉虫色に書かれている場合が多かったように記憶しています。このような場合は、設問の内容を踏まえて、考えた方が良いと思います。


また、事例Ⅳでは、与件文の他に、財務指標の計算結果も踏まえて現状分析を行います。



2)経営戦略の方針


SWOTに区分できたら、戦略の方針を出すために、SWOTクロス分析を行います。各組合せの方向性は、次のように考えられます。事例企業では、この組合せで具体的には、どのような経営戦略が考えられるのか当てはめてみてください。


A【強み・機会】:機会に乗じる


B【強み・脅威】:脅威を克服する


C【弱み・機会】:弱みを補強する


D【弱み・脅威】:撤退する


また、経営革新を求められる問題では、A、B、問題の改善を求められる問題では、C、Dを問われることが多いと思われます。


特にAでは、エイベルの3次元ドメインの誰に(who)、何を(what)、どのように(haow)を使うと考えやすいでしょう。



3)経営戦略


次のステップでは、事例企業が今後、どのような成長領域があるかを考え、その領域の中でどのような競争をしていくのかを考えていくことになります。


・【成長戦略】

これは、製品を既存、新規、市場を既存、新規に分けて、マトリクスにしたアンゾフの成長ベクトルで考えると良いでしょう。このとき、経営戦略の方針としては、これからの成長を考えるのですから、【強み・機会】で導かれたものを当てはめるようにしましょう。


・【競争戦略】

ポーターの競争戦略の組合せから考えると、ほぼ十中八九(100%かもしれません)差別化集中戦略を選択することになります。これは、事例企業が中小企業であり、経営資源が限られているからです。ターゲット顧客と差別化ポイントは、先に述べたエイベルの3次元ドメインで既に導かれているので、それを当てはめれば良いでしょう。



4)機能別戦略

事例Ⅰでは、主に人事・組織、事例Ⅱでは、マーケティング・流通、事例Ⅲでは、生産管理、事例Ⅳでは、財務・会計に関する、事例企業の状況に沿った具体的施策の提案になります。これに、情報関係の問題が絡むこともあります。


いずれの場合も、SWOTクロス分析にて、抽出された課題に対応するものと思われます。


以上のようなプロセスで、事例問題に対応すれば、一貫性と題意からの遊離はなくなることと思われます。



前にも書きましたが、できるだけ多くの事例問題を解くことによって、経営戦略のプロセスに落しす訓練をしてください。過去問や模擬試験の他に、中小企業診断士第2次試験用の問題集も市販されていますので、そちらも利用すると良いでしょう。


事例問題の解き方を体に染み込ませる。


そのぐらいの感覚が持てるぐらい、事例問題を解けば、自信を持って試験会場に向かうことができます。


そして、この訓練は技術士第2次試験でも活きてきます。