診断士2次受験指南(第3回)

前々回、前回と渡り、中小企業診断士2次試験の概要を述べてきました。今回は、実際に事例問題を目の前にして、どのように解いていくべきかの解法の原則について述べます。

第1回で、ポイントとして「2次試験では経営診断・助言ができる能力が求められている」とうことを述べました。すなわち、「答案により、事例問題に書かれている企業を取巻く様々な環境を考慮して、企業が持つ問題点や課題を解決していく」ということになります。ということは、答案は、診断結果であるということです。

「解法の原則1:答案は診断・助言内容である」

実際の企業診断では、経営者に与える助言は、単に改善を提案するだけでなくはありません。なぜ、そのような提案に至ったのか、理由も含めて説明します。
それは、外部環境の動向や内部環境の経営資源の分析(SWOT分析)の前提に立って、どのような経営的なアプローチが考えられるか(経営戦略)を説明し、各事業の方向性(事業戦略)やそのために営業や製造はどうしたら良いか(機能戦略)、さらに具体的にはどのような方法でやっていくのか(具体的改善提案)を説明していきます。
ですから、これらを答案としては、示さなければならないのです。すなわち、答案は診断・助言内容です。

では、上で述べた診断・助言するための根拠(理由)は、どこにあるのでしょうか。もう、お分かりですよね。それは、事例与件文の中にあります。あるいは、若干長い設問文だと、そこからも根拠(理由)が見いだせるかもしれません。
したがって、答案には、与件より根拠(理由)を求め、それを書けば良いのです。
また、設問文は、与件文に書き示されていることを、抽出したり、分析するための指示が与えられているのだと解釈した方が良いでしょう。

「解法の原則2:根拠(理由)は与件文、設問文より引出す」

ここの部分は、大事なことでもあるので、よく理解していただきたいと思います。毎年、多くの方が受験され、自分ではできたと思っても、苦杯をなめられる方がいらっしゃいますが、設問文で問われていることを、根拠(理由)を与件文より、きちんと引出して答案として作成されているでしょうか。ふと思いついたことや一般的に言われていることを書いているのではないですか。

構造的に考えた場合、事例与件文と設問文を経営戦略策定のためのフローチャートの沿って考えると見えやすくなると思います。
問題用紙に書かれている事例与件分と設問文を次に示す経営戦略策定のフローチャートに当てはめてみれば良いのです。

1)経営理念
   ↓
2)環境分析(外部環境・内部環境)
   ↓
3)今後の経営の方向性
   ↓
4)経営戦略(成長戦略、競争戦略)
   ↓
5)機能別戦略(人事・組織、マーケティング、生産・技術、財務・会計)


与件文と設問文で、このフローチャートの項目を埋めることができると思います。皆さんも、過去問をご覧になって、フローチャートへの埋め込みをやってみてください。
これは、訓練です。本番までに習熟しておいた方が良いと思います。実際の試験の中では時間的な制約がありますので、試験時間の中でもできる慣れが必要になってくると思います。できれば、いくつもの事例をやっていただき、皆さんのスキルとして頂きたいと思います。まだ、本試験までには、時間がありますから、模擬試験や問題集などで、徹底して自分のものになるように訓練してください。

受験校の先生方が、「経営戦略のフローチャートで考えてください」とよく言われていましたが、私もこのような流れが理解できるまでは、なんとなくやっているという感じで、本質を理解していなかった気がします。だから、解答に一貫性がなかったんですね。

このように解釈できると、経営戦略の部分で方向性が違っていても、流れで一貫性があれば、答案としては合格点がもらえるのです。SWOT分析において、機会、脅威、強み、弱みをどのように設定するかで、その後の流れができてくるからです。
したがって、2次試験には、正解はないと思っていた方がよく、「与件文、設問文をこのように解釈したから、このような戦略を描きました」ということに一貫性があれば良いのです。ここで、一貫性とは、論理に矛盾がないことです。


ポイント 「解法の原則1:答案は診断・助言内容である」
ポイント 「解法の原則2:根拠は与件文、設問文より引出す」